Y染色体ハプログループ
前回の基礎編では、母系のミトコンドリアDNAについて、ハプロタイプの分類を紹介した。今回は、父系の遺伝情報がわかるY染色体ハプロタイプについて簡単に説明したい。Youtube動画と合わせて見てもらいたい。
Y染色体の分析
前回の説明と重複するが、もう一度おさらいしておくと、人のDNAの遺伝情報は以下の通り。
DNA本数 | 塩基対数 | 細胞中の個数 | |
核DNA | 46本(23対) | 32億 | 1つ |
Y染色体 | 核DNAのうちの1対 | 5900万 | 1つ |
mtDNA | mtDNAの1対 | 1万6500 | 数百〜数千程度 |
劣化の進んだ古代人の遺骨から核DNAを抽出するためには、多くの試料を必要とするため、一般的に核DNAを解析はミトコンドリアDNAより困難であるとされる。
世界のY染色体ハプログループ
Y染色体ハプログループもmtDNAハプログループと同様、アフリカを起点として、世界中に広がったと考えられている。Y染色体ハプログループは父系であることと関連して、そのグループが言語学的な分類に近いものとなっている傾向も確認されている。
それぞれの地域で特徴的な系統は以下の通り
- アフリカ:A系統
- Y染色体アダムの系統。アフリカ大陸で分化が進んだ
- メソポタミア周辺:CT系統
- アフリカ以外のY染色体の起点となる系統。ユーラシアン・アダムの系統
- ヨーロッパ:R系統
- コーカサス地方で発生した系統。インド・ヨーロッパ語族など
- ユーラシア北部:N系統
- 東アジアの北方で分化した系統。遼河文明で高頻度に発見
- アジア:O系統
- 東アジアの南方で分化した系統。華北部からポリネシアまで広範に分布
- ユーラシア・アメリカ:C系統
- メソポタミアで大きくC1a、C1b、C2の3系統に分化して世界中に分布
- 日本:D系統
- 日本人とチベット人に特徴的な系統。YAPというDE系統に特徴的な遺伝子の挿入が見られる
- アメリカ大陸:Q系統
- アメリカ先住民に高頻度で見られる。中央アジアにも存在。
日本人のY染色体ハプログループ
ユーラシア大陸最東部にあたる、日本列島には、母系のmtDNA同様、父系のY染色体でも多様なハプログループが存在することが知られている。それぞれの分類は以下の通り。
ハプログループ | 起源・特徴 | 存在比率(%) | 日本列島への流入 |
D1b系統 | 日本?・YAP遺伝子 | 40% | 縄文時代・東アジア |
O1系統 | 不明 | 30% | 長期にわたって流入? |
O2系統 | 中国? | 20% | 古墳時代?・中国/朝鮮 |
C1a1系統 | 日本? | 5% | 縄文時代 |
C2 | 北東ユーラシア | 5% | 縄文時代?・オホーツク |
縄文系の日本人に特徴的な系統は、YAP遺伝子のD1b系統と、日本列島で発生したと考えられているが、その起源は謎が多いとされるC1a1の系統がある。
また、O1のうち、日本人に多いとされるのはO1b2だが、日本人と朝鮮人に特徴的とされる。当チャンネルでは、出雲王朝と日本海沿岸地域に関連したグループである可能性も考えているが、さらなる調査が必要。
O2系統については、弥生時代後期から古墳時代にかけて大和王権が発展していく中でやってきた渡来人である可能性を考えている。